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【実録】隣の空き家から異臭と害虫…地獄の3ヶ月を終わらせた『妨害予防請求』という最終手段

2025 9/26
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未分類
2025年9月25日2025年9月26日
匂いに耐えられず、顔をしかめて鼻をつまんでいる。美しい女性。文字は隣の家からの異臭・害虫も限界。法的手段で解決と書いてある。

隣の空き家から漂う異臭や、大量発生する害虫に「もう限界…」と感じていませんか?その深刻な悩み、泣き寝入りする必要はありません。結論から言うと、隣家の空き家問題は「妨害予防請求」などの法的手段を用いて解決することが可能です。

この記事では、実際に3ヶ月間も隣の空き家被害に苦しんだAさんの実例をもとに、具体的な解決プロセスを徹底解説します。

  • 異臭や害虫の発生源を特定する方法
  • 裁判で有効となる証拠の集め方
  • 『妨害予防請求』の手続きと費用
  • 訴訟以外の解決策

「行政に相談しても動いてくれない」「誰に相談すればいいか分からない」と途方に暮れている方も、この記事を読めば、今すぐ何をすべきか、そして平穏な日常を取り戻すための具体的な道筋が全てわかります。

この記事の執筆者

執筆者:おがわ ひろふみ 

小川不動産株式会社代表取締役、行政書士小川洋史事務所所長

宅地建物取引士・行政書士。東北大学大学院で工学修士、東京工業大学大学院で技術経営修士を取得。不動産投資歴20年以上、欧州グローバル企業のCFOとして、Corporate Finance、国際M&Aに従事。不動産と法律、金融、テクノロジーの知見と経験を融合させ、独自の学際的な視点から、客観的で専門的な情報を提供します。

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目次

はじめに:ある住民の恐怖体験

「もう限界です。隣の空き家から毎日漂ってくる異臭で、まともに窓も開けられません」

東京都内に住む会社員のAさん(45歳)から、このような相談を受けたのは2024年の夏のことでした。隣接する空き家から発生する異臭と害虫被害に3ヶ月間も悩まされ、精神的にも肉体的にも追い詰められた状態でした。

Aさん一家が現在の住宅に引っ越してきたのは5年前。当時、隣の家には高齢の女性が一人で暮らしていました。しかし、2年前にその女性が亡くなり、以降は相続人が現れることもなく、家は放置されたままになっていたのです。

最初の異変に気づいたのは、2024年5月下旬のことでした。
「最初は、生ゴミのような臭いがたまにする程度でした。でも6月に入ると、その臭いは日に日に強くなり、特に雨上がりの日は耐え難いほどでした」
さらに深刻だったのは、害虫の大量発生でした。
「6月中旬頃から、今まで見たこともないような数のハエが我が家の周りを飛び回るようになりました。洗濯物は外に干せなくなり、窓を開けることもできません。子供たちは虫を怖がって庭で遊ぶこともなくなりました」

Aさんは当初、市役所に相談しました。しかし、「所有者が不明なので対応が難しい」という回答しか得られませんでした。自治会にも相談しましたが、「個人の財産なので勝手に手を出せない」と言われるばかり。
「このままでは家族の健康にも影響が出る。でも、誰も助けてくれない。本当に途方に暮れました」

そんな時、知人の紹介で弁護士に相談したところ、「妨害予防請求」という法的手段があることを知ったのです。

第1章:空き家による近隣被害の深刻な実態

1-1. 全国で急増する空き家問題

害虫が近くの家に移動することで、近隣トラブルに発展することもよくある話です。近隣の家でゴキブリやハエなどが大量発生した、やたらと野良猫やネズミが出没するようになった…となると、真っ先に疑われるのは管理されていない空き家です。

総務省の統計によると、2023年時点で全国の空き家数は約900万戸に達し、過去最多を記録しています。特に問題となるのは、適切な管理がされていない「放置空き家」です。

こうした放置空き家から発生する被害は多岐にわたります。

主な被害の種類:

  • 異臭・悪臭の発生
  • 害虫・害獣の大量発生と周辺への拡散
  • 建物の老朽化による倒壊の危険
  • 不審者の侵入や犯罪の温床化
  • 景観の悪化と地域の資産価値低下

1-2. 異臭発生のメカニズム

空き家から異臭が発生する主な原因は以下の通りです。

排水トラップの水切れ:
封水トラップの水がなくなると下水管からゴキブリなどの害虫が空き家内に侵入します。通常、キッチンや浴室、トイレなどの排水口には「封水トラップ」と呼ばれる水たまりがあり、下水からの臭いや害虫の侵入を防いでいます。しかし、長期間使用されないと、この水が蒸発してしまい、下水管から直接臭いが上がってくるようになります。

カビの大量発生:
換気がされない空き家では湿気がこもり、壁や天井、床下などにカビが大量発生します。カビは独特の臭いを発し、これが建物全体に充満して外部にも漏れ出します。

不法投棄されたゴミの腐敗:
管理されていない空き家は、不法投棄の標的になりやすく、投棄された生ゴミなどが腐敗して強烈な臭いを発することがあります。

1-3. 害虫被害の恐怖

空き家を管理せず放置していると、いくつかの被害を空き家が受けることになるのですが、害虫の被害もその一つです。害虫が発生すると、空き家だけではなく近隣住人にまで迷惑をかけることになってしまうでしょう。
空き家に発生しやすい害虫とその被害は以下の通りです。

ゴキブリ・ハエ:
ハエは、赤痢・チフスなど胃腸に症状が出る感染性病原菌を媒介するといわれています。これらの害虫は病原菌を媒介する可能性があり、近隣住民の健康に直接的な脅威となります。

シロアリ:
害虫の中で、空き家に大きなダメージ与えてしまうのがシロアリ被害です。シロアリの発生条件もエサを求めてということになりますが、木材を食べる上に湿った木材を好みます。シロアリ被害が進行すると、建物の構造的な強度が低下し、最悪の場合は倒壊の危険も生じます。

ダニ・チャタテムシ:
ホコリを餌とするこれらの害虫は、アレルギーの原因となり、特に子供や高齢者の健康に悪影響を及ぼします。

スズメバチ・アシナガバチ:
ハチは人を刺すことがあり、スズメバチやアシナガバチに刺された場合、命にかかわることもあります。人の出入りがない空き家では、軒下や屋根裏に巨大な巣が作られることがあり、近隣住民にとって重大な脅威となります。

第2章:法的対抗手段としての『妨害予防請求権』

2-1. 妨害予防請求権とは

物権の内容が侵害されたり、そのおそれがある場合に、それを排除・予防するために物権に基づいて請求できる権利を『物権的請求権』といい、

①返還請求権
②妨害排除請求権
③妨害予防請求権

の3種類があります。

このうち妨害予防請求権とは、所有権などの物権が将来妨害される可能性が高い場合に、その妨害を事前に防止するために措置を請求する権利です。

妨害予防請求権は、民法には明文規定はありませんが、判例・学説上認められている物権的請求権の一つです。判例(最高裁昭和62年1月22日判決など)では、「将来発生するおそれのある妨害が現実に発生する蓋然性が高い場合」に認められており、単なる不安や危惧感では足りず、客観的・具体的な危険性の立証が必要とされています。

妨害予防請求権の特徴:

  • 実際に被害が発生する前に行使できる
  • 相手方の過失(不注意)を証明する必要がない
  • 所有権などの物権を持っていれば行使可能

2-2. 空き家問題における妨害予防請求の要件

妨害予防請求権の行使には、

①自己の所有権等の権利、
②隣地から生じる危険の客観的・高度な蓋然性、
③危険の原因が隣地にあること、

の3点の立証が必要です。

空き家からの被害に対して妨害予防請求を行うには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 所有権等の権利を有していること
請求者が土地や建物の所有権、賃借権などの権利を持っていることが必要です。

2. 客観的に見て危険性が極めて大きいこと
妨害予防請求を行う裁判例においては、請求者の単なる「危惧感」を超えて、高度の危険性・蓋然性があることの主張・立証まで行わなければ、請求が棄却される傾向にあります。

単に「臭いがする」「虫が出る」というだけでは不十分で、以下のような具体的な被害や危険性を示す必要があります:

  • 害虫の大量発生により日常生活に支障が生じている
  • 異臭により健康被害が発生している(医師の診断書など)
  • 建物の老朽化により倒壊の危険性がある(建築士の鑑定書など)

3. 危険の原因が相手方の土地にあること
被害の原因が隣の空き家にあることを証明する必要があります。害虫の発生源の特定、臭いの発生源の調査などが必要となります。

2-3. 立証のハードルと対策

隣地から生じる危険の客観的かつ具体的な危険性があることについて、専門家の意見書や鑑定書を取得する等して主張・立証する必要があります。
妨害予防請求の最大の難関は、この立証のハードルの高さです。裁判所は、単なる主観的な不安感では請求を認めず、客観的で具体的な証拠を求めます。
効果的な立証方法:

  1. 写真・動画による記録
    • 害虫の発生状況を日時入りで撮影
    • 異臭の発生源となっている箇所の撮影
    • 建物の劣化状況の定期的な記録
  2. 専門家による鑑定・調査
    • 害虫駆除業者による発生源の特定調査
    • 環境調査会社による臭気測定
    • 建築士による建物の危険度診断
  3. 被害の記録
    • 日記形式での被害状況の記録
    • 医師の診断書(健康被害がある場合)
    • 近隣住民の陳述書
  4. 行政機関への相談記録
    • 市役所、保健所への相談記録
    • 行政からの指導文書等

異臭や害虫の発生源の特定には、専門業者による調査や臭気測定が必要となる場合があります。これらの調査には費用がかかりますが、裁判や行政への働きかけの際に強力な証拠となります。

第3章:Aさんのケース – 実際の手続きと結果

3-1. 証拠収集の3ヶ月

Aさんは弁護士のアドバイスに従い、まず証拠収集から始めました。

第1段階:被害状況の記録(6月)
毎日、害虫の発生状況を写真と動画で記録。特に朝と夕方の時間帯に集中的に撮影し、日時と気象条件も併せて記録しました。

第2段階:専門業者による調査(7月)
害虫駆除業者に依頼し、害虫の発生源を調査。調査の結果、隣の空き家の排水口周辺と、庭に放置された不法投棄物が主な発生源であることが判明しました。業者からは詳細な調査報告書を作成してもらいました。

また、環境調査会社に臭気測定を依頼。隣地境界付近で環境省の定める悪臭防止法の基準値を超える数値が検出されました。

第3段階:健康被害の立証(7月下旬)
家族全員が皮膚のかゆみや呼吸器系の不調を訴えていたため、医療機関を受診。医師からは「劣悪な環境による健康被害の可能性が高い」との診断書を取得しました。

3-2. 所有者の特定

妨害予防請求を行うには、相手方を特定する必要があります。Aさんの場合、以下の手順で所有者を特定しました。

  1. 登記簿の取得
    法務局で隣地の登記簿謄本を取得。所有者は2年前に亡くなった女性のままになっていました。
  2. 相続人の調査
    弁護士を通じて戸籍調査を実施。相続人として、県外に住む息子(長男)と娘(長女)の存在が判明しました。
  3. 連絡先の特定
    住民票の取得により、相続人の現住所を特定しました。

3-3. 交渉から訴訟提起まで

内容証明郵便による通知(8月上旬)
まず、弁護士名で相続人に対し、空き家の管理状況と近隣への被害について通知しました。害虫駆除と臭気対策を求め、2週間以内の回答を要請しました。しかし、期限を過ぎても回答はありませんでした。

再度の通知と警告(8月下旬)
今度は、妨害予防請求訴訟を提起する可能性があることを明記した上で、再度通知を送付。この際、これまでに収集した証拠の概要も添付しました。
それでも相続人からの反応はありませんでした。

訴訟提起の決断(9月)
Aさんは家族と相談の上、訴訟提起を決断しました。請求内容は以下の通りです:

  1. 空き家内の清掃および害虫駆除の実施
  2. 排水設備の適切な管理(封水の維持)
  3. 不法投棄物の撤去
  4. 今後の定期的な管理の実施
  5. 訴訟費用の負担

3-4. 訴訟の経過と和解

訴訟提起後、ようやく相続人から反応がありました。

第1回口頭弁論(10月)
相続人側は、「相続放棄を検討していた」「遠方のため管理が困難だった」などと主張しましたが、裁判官からは「それでも所有者としての管理責任は免れない」との指摘を受けました。

和解協議(11月)
裁判官の勧めにより、和解協議が行われました。Aさん側が提出した証拠の説得力もあり、相続人側も責任を認めざるを得ない状況でした。

和解成立(12月)
最終的に以下の内容で和解が成立しました:

  1. 相続人は1ヶ月以内に専門業者による建物内外の清掃と害虫駆除を実施する
  2. 3ヶ月以内に空き家を売却または解体する
  3. 売却・解体までの間、月1回の巡回管理を行う
  4. Aさんの訴訟費用の一部(30万円)を負担する

和解成立から2週間後、専門業者による大規模な清掃と害虫駆除が実施され、Aさん一家はようやく平穏な生活を取り戻すことができました。

第4章:妨害予防請求以外の法的対処法

4-1. 空家等対策特別措置法の活用【2023年改正法対応】

妨害予防請求訴訟は強力な手段ですが、時間と費用がかかります。そこで、まず活用を検討すべきが「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」に基づき、行政に働きかける方法です。2023年12月の法改正により、行政がより早期に介入できるようになりました。

1. 「管理不全空家」制度の創設
改正法では、放置すれば将来「特定空家」になるおそれがある「管理不全空家」という区分が新設されました。壁の亀裂や窓ガラスの破損、雑草の繁茂など、管理が不十分な状態がこれに該当します。市町村は、この「管理不全空家」の所有者に対し、改善を求める「指導」を行うことができます。

2. 行政による措置の流れ
空家法に基づき、行政は以下の段階的な措置を取ることができます。

  • 指導:「管理不全空家」の所有者に対して行われます。
  • 勧告:指導に従わない「管理不全空家」や、より状態の悪い「特定空家」の所有者に対して行われます。この勧告を受けると、土地の固定資産税の優遇(住宅用地特例)が解除され、税額が3倍から6倍に跳ね上がる可能性があります。
  • 命令:勧告にも従わない場合に出され、違反すると50万円以下の過料が科されます。
  • 代執行:命令にも従わない場合の最終手段です。

3. 行政への働きかけのポイント
この法改正により、Aさんのケースのような「特定空家」に該当するか微妙な段階でも、「管理不全空家」として行政に指導を促すことが可能になりました。行政に相談する際は、以下の点が重要です。

  • 被害状況を具体的に記録した資料(写真、日記など)を準備する
  • 複数の近隣住民と連名で要望書を提出し、問題の公共性を示す
  • 定期的に進捗を確認し、粘り強く働きかける

空家対策特別措置法に基づく行政の対応は、自治体によって運用実績に差があり、必ずしも迅速に問題が解決されるとは限りません。特に所有者不明や相続人の所在不明の場合、行政の対応が遅れるケースもあります。

4-2. 土地工作物責任(民法717条)に基づく損害賠償請求

土地工作物責任(民法717条)は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じた場合、占有者が第一に責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が責任を負います。空き家のように占有者がいない場合は、所有者が直接責任を負います。

実際に被害が発生した場合は、民法第717条の土地工作物責任に基づいて損害賠償を請求することができます。

土地工作物責任の特徴:

  • 所有者は無過失責任を負う(過失がなくても責任を負う)
  • 占有者がいない空き家の場合、所有者が直接責任を負う
  • 相続人が複数いる場合は連帯責任

請求できる損害の例:

  • 害虫駆除費用
  • 医療費(健康被害がある場合)
  • 精神的苦痛に対する慰謝料
  • 資産価値の低下分

【重要】妨害予防請求との違い
妨害予防請求が『異臭や害虫の発生を止めさせる』など、将来に向けた事前の差止めを目的とするのに対し、土地工作物責任は、既に発生した被害に対する事後の金銭賠償を求める制度です。両者は目的が異なるため、状況に応じて使い分ける、あるいは併用することが考えられます。

4-3. 緊急時の対処法

空き家の所有者が不明または所在不明の場合、以下の制度を活用できます:

1. 不在者財産管理人制度
所有者自体は戸籍等から判明したが、所在が特定できない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。

2. 相続財産清算人制度(旧:相続財産管理人)
相続人全員が相続放棄した場合や、相続人が存在しない場合は、相続財産清算人の選任を申し立てることができます。ただし、この申立てには、管理人の報酬などに充てるため、数十万~百万円程度の予納金を裁判所に納める必要がある場合が多く、費用面でのハードルが高い点に注意が必要です。

3. 管理不全土地・建物管理制度
近年の民法改正により、管理不全土地・建物管理制度が新設されました。この制度は、管理不全状態の土地・建物によって周辺の権利や利益が侵害されている場合、利害関係人が家庭裁判所に管理命令の発令を請求でき、管理人が選任されることで管理が行われる仕組みです。害虫や悪臭などによる健康被害が生じている場合も、被害者は「利害関係人」としてこの制度の利用が可能です。

4. 緊急時の限定的な対応
【注意】自力救済は原則として法律で禁止されています。

隣地に無断で立ち入ったり、建物を破損させたりすれば、住居侵入罪や器物損壊罪に問われる可能性があります。

ただし、台風で屋根がまさに飛散し、自分の家に直撃する危険が目前に迫っているなど、ごく例外的な状況下では、損害を避けるための「緊急避難」として、必要最小限の措置が正当化される余地はあります。その場合でも、以下の点を厳守し、リスクを理解した上で慎重に行動すべきです。

  • 事前に写真等で状況を記録
  • 複数人の立会いのもとで実施
  • 必要最小限の措置に留める
  • 事後に所有者に通知

5. 仮処分の活用
緊急性が高い場合や、裁判が長期化する見込みがある場合は、妨害予防請求訴訟に先立って「仮処分」を申し立てることも有効です。仮処分が認められれば、裁判所は暫定的に必要な措置を命じることができ、被害の拡大を防ぐことができます。

4-4. どの手段をどう選ぶか

まず費用のかからない『空家法の活用(行政への働きかけ)』が第一歩となります。

行政の対応が遅い場合や、より強力な措置を求める場合に、費用をかけて『妨害予防請求訴訟』や『管理不全土地・建物管理制度の申立て』といった司法手続きに進むのが一般的な流れです。

既に発生した損害の賠償を金銭で求めたい場合は、これらと並行して『土地工作物責任』を追及することになります。

第5章:近隣住民のための実践的対策マニュアル

5-1. 初期対応 – まず何をすべきか

空き家による被害に気づいたら、以下の手順で対応しましょう:

STEP1:状況の記録開始(1週間目)

  • 被害状況を写真・動画で記録
  • 日時、天候、被害の程度を日記に記録
  • 可能であれば臭気や騒音を測定

STEP2:所有者の調査(2週間目)

  • 法務局で登記簿謄本を取得
  • 近所への聞き込み
  • 自治会や民生委員への相談

STEP3:行政への相談(3週間目)

  • 市役所の空き家対策担当部署
  • 保健所(衛生面の被害がある場合)
  • 建築指導課(倒壊の危険がある場合)

STEP4:所有者への連絡(1ヶ月目)

  • 手紙での丁寧な状況説明
  • 改善の要望
  • 話し合いの提案

5-2. 証拠収集のポイント

法的措置を検討する場合、以下の証拠が重要になります:

1. 被害の客観的証明

  • 害虫の発生状況(種類、数、頻度)
  • 臭気の測定データ
  • 建物の劣化状況

2. 因果関係の証明

  • 害虫の発生源の特定
  • 臭気の発生源の特定
  • 専門業者による調査報告書

3. 被害の程度の証明

  • 日常生活への影響
  • 健康被害の有無
  • 経済的損失

4. 改善要求の記録

  • 所有者への連絡記録
  • 行政への相談記録
  • 改善されない期間の記録

5-3. 費用対効果を考えた対処法の選択

対処法を選択する際は、費用と効果のバランスを考慮することが重要です:

1. 話し合いによる解決(費用:0〜数万円)

  • メリット:費用が安い、関係悪化を避けられる
  • デメリット:強制力がない、時間がかかる可能性

2. 内容証明郵便による警告(費用:1〜3万円)

  • メリット:正式な記録が残る、心理的プレッシャー
  • デメリット:それでも無視される可能性

3. 行政への働きかけ(費用:0円)

  • メリット:費用がかからない、行政の権限を活用
  • デメリット:時間がかかる、必ず対応してもらえるとは限らない

4. 調停申立て(費用:数千円〜数万円)

  • メリット:裁判所が関与、話し合いの場を設定
  • デメリット:相手が出席しない可能性

5. 訴訟提起(費用:30万円〜100万円以上)

  • メリット:強制力がある、確実な解決
  • デメリット:費用が高い、時間がかかる、関係の悪化

第6章:空き家問題の根本的解決に向けて

6-1. 予防の重要性

空き家問題は、発生してからの対処より予防が重要です。地域全体で以下の取り組みを行うことが効果的です:

1. 早期発見システムの構築

  • 自治会による定期的な見回り
  • 異変を発見した際の連絡体制の整備
  • 行政との連携強化

2. 所有者との関係構築

  • 空き家所有者の連絡先の把握
  • 定期的な情報提供
  • 管理サービスの紹介

3. 地域での支援体制

  • 空き家の見守りボランティア
  • 簡易的な管理の代行
  • 所有者への情報提供

6-2. 行政・専門家との連携

空き家問題の解決には、様々な専門家との連携が不可欠です:

連携すべき専門家:

  • 弁護士(法的対応)
  • 司法書士(登記・相続関係)
  • 不動産業者(売却・活用提案)
  • 建築士(危険度診断)
  • 害虫駆除業者(被害対策)

行政サービスの活用:

  • 空き家相談窓口
  • 空き家バンク
  • 空き家の解体・改修費用に対する補助制度

6-3. 将来への提言

空き家問題は今後さらに深刻化することが予想されます。社会全体で以下の対策を進める必要があります:

1. 法制度の充実

  • 管理責任の明確化
  • 行政の権限強化
  • 被害者救済制度の確立

2. 経済的インセンティブ

  • 適正管理への補助金
  • 放置に対する課税強化
  • 活用促進のための支援

3. 社会的意識の向上

  • 所有者責任の啓発
  • 相続時の適切な対応
  • 地域での見守り意識

おわりに:Aさんからのメッセージ

「3ヶ月間、本当に辛い日々でした。でも、諦めずに行動したことで、問題を解決することができました。同じように悩んでいる方に伝えたいのは、一人で抱え込まないでほしいということです。」

Aさんは現在、地域の空き家対策委員会のメンバーとして活動しています。自身の経験を活かし、同じような問題で悩む住民の相談に乗っています。

「法的手段は最終手段ですが、必要な時には躊躇せずに使うべきです。ただ、それ以前に地域全体で空き家問題に取り組むことが大切だと思います。」

空き家問題は、個人の問題であると同時に地域全体の問題でもあります。被害を受けている方は、決して泣き寝入りすることなく、適切な対処を行ってください。そして、地域全体で協力し、問題の予防と解決に取り組んでいくことが重要です。

本記事が、空き家問題で悩む方々の一助となることを願っています。


この記事の執筆者

執筆者:おがわ ひろふみ 

小川不動産株式会社代表取締役、行政書士小川洋史事務所所長

宅地建物取引士・行政書士。東北大学大学院で工学修士、東京工業大学大学院で技術経営修士を取得。不動産投資歴20年以上、欧州グローバル企業のCFOとして、Corporate Finance、国際M&Aに従事。不動産と法律、金融、テクノロジーの知見と経験を融合させ、独自の学際的な視点から、客観的で専門的な情報を提供します。

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老舗クロコダイル専門店【池田工芸】
小川洋史lOGAWA Hirofumi
代表取締役
北海道岩見沢市生まれ。
資格:宅地建物取引士、行政書士、賃貸不動産経営管理士、競売不動産取扱主任者、日商簿記1級 FP2,TOEIC895等。
対応言語:日本語(JP), 英語(EN), 伊語(IT)
学歴:札幌西高、東北大、東工大
学位:工学修士、技術経営修士
札幌、仙台、東京、ミラノ(伊)、ボローニア(伊)、ハワイ、バンコク、沖縄など世界各地で田舎の木造からタワマンまで世界中の不動産を経験。主に不動産と法律について発信。
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