ドローンの「特定飛行(航空法で原則禁止されている危険な空域・方法での飛行)」を行うための申請は、飛行の「範囲・期間」の切り分けと、飛行形態のリスクに応じた「難易度」によって、以下のように分類される。
1. 範囲・期間による分類(包括か、個別か)
■ 包括申請(ほうかつしんせい)
- 難易度:低〜中
- 解説: 同一の申請者が一定期間内(最長1年間)に反復して飛行を行う場合、又は異なる複数の場所(「日本全国」など)で飛行を行う場合に、それらを一つにまとめて行う申請手法である。
- 特徴: DID(人口集中地区)の上空、夜間飛行、目視外飛行、人や物件から30m未満の飛行といった一般的な特定飛行について、「航空局標準マニュアル」を使用することを条件に、DIPS2.0上で容易に取得することができる。代行業者が低価格で請け負うのは主にこのタイプである。ただし、取得が容易な反面「風速5m/s以上では飛ばない」等のマニュアルの厳しい制約に現場が縛られることになる。
■ 個別申請(こべつしんせい)
- 難易度:中〜高
- 解説: 飛行する「日時」と「経路(場所)」をピンポイントで厳格に特定して行う申請。
- 特徴: 航空法上、特定のリスクが高い飛行形態については、包括申請が認められず、必ず個別申請としなければならない。代表的なものが**「催し場所(イベント)の上空における飛行」や、「人又は家屋の密集している地域の上空で夜間における目視外飛行」**である。これらは、万が一の墜落時に多数の被害者が出るおそれがあるため、その日・その場所の立入禁止区画の設定図などを提出し、個別の安全性を審査官に証明しなければならない。
2. リスクと立証責任による分類(難易度の階層)
上記の申請をベースに、どのようなリスク評価と運用体制を用いるかで難易度が跳ね上がる。
■ 独自マニュアル申請(カテゴリーⅡ飛行のカスタマイズ)
- 難易度:高
- 解説: 国が用意した「航空局標準マニュアル」では自社のビジネスモデルが成立しない場合、自ら「独自の飛行マニュアル」を作成して許可・承認を得る申請。
- 特徴: 例えば「長距離のインフラ点検のため、補助者を全経路に配置できない」といった場合、標準マニュアルの要件から逸脱するため定型的な包括申請は弾かれる。「補助者を置かない代わりに、通信途絶時はシステムにより〇秒以内に自動帰還する(フェールセーフ)」といった機体の性能や物理的措置による代替案を、客観的エビデンスとともに申請書に組み込み、審査官を論理的に納得させる必要がある。ここからは専門的な法務設計の領域となる。
■ レベル3.5飛行申請
- 難易度:極めて高
- 解説: 無人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル3飛行)のうち、操縦ライセンスの保有や保険への加入、機上カメラによる歩行者等の有無の確認といった要件を満たすことで、従来の「看板の設置」等の立入管理措置を撤廃して効率的に飛行させる形態。
- 特徴: DIPS2.0で単に申請するだけでは通らない。事前に本省航空局(国土交通省)の窓口と個別の調整を行い、運航概要等をすり合わせた上で「航空局管理番号」の発行を受けなければならない。高度な運航体制と行政交渉能力が求められる。
■ カテゴリーⅢ飛行(レベル4飛行等)申請
- 難易度:最高難度
- 解説: 第三者の上空で特定飛行を行う、現行法における最高難易度の飛行。有人地帯での目視外飛行(レベル4飛行)などがこれに該当する。
- 特徴: 単なるマニュアル作成では許可されない。前提として「一等無人航空機操縦士の技能証明」と「第一種機体認証」という国の厳格なお墨付きが必要である。その上で、SORA(Specific Operations Risk Assessment)等のガイドラインに基づき、精緻なリスク分析と評価を行い、地上リスク・空中リスクをどのように極小化しているかを立証する完全な「安全確保措置(セーフティ・ケース)」を構築・提出することが求められる。
まとめると、数万円で取得できる包括申請は、ドローンを飛行させるための「最も基礎的な入場券」に過ぎない。この定型申請でカバーできる業務(一般的な空撮や小規模な点検)であれば、それを利用することは極めて合理的である。
しかし、イベント上空での飛行、補助者を配置しない目視外飛行、あるいは都市部での物流など、自社のビジネスを拡大しようとした瞬間、定型化された包括申請の枠組みは通用しなくなる。その際は、自らの運航リスクを工学的・法学的に立証する能力が不可欠となることを理解しておく必要がある。

コメント