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  4. 第2章: 農地転用に関する法体系

第2章: 農地転用に関する法体系

2024 8/10
売買 法律 行政書士
2024年8月9日2024年8月10日
農地法 農地転用許可 行政書士

農地転用に関する法体系は、農地法を中心としつつ、関連する法令や通達、ガイドラインなどが複雑に絡み合っています。本章では、これらの法体系を詳細に解説し、農地転用許可制度の全体像を把握することを目指します。

2.1 農地法

2.1.1 農地法の構成と農地転用関連条文

農地法は、全8章52条から構成されていますが、農地転用に直接関係する主要な条文は以下の通りです:

  1. 第4条:自己の農地の転用
  2. 第5条:所有権等の移転を伴う農地の転用
  3. 第51条:違反転用に対する措置命令
  4. 第51条の2:違反転用に対する原状回復命令
  5. 第51条の3:違反転用に関する罰則

これらの条文を中心に、農地転用許可制度の骨格が形成されています。

第4条(自己の農地の転用)

第4条は、農地所有者が自らの農地を転用する場合の規制を定めています。主な内容は以下の通りです:

  1. 農地を農地以外のものにする場合、都道府県知事(4ヘクタールを超える場合は農林水産大臣)の許可が必要
  2. 許可不要の例外規定(2アール未満の転用など)
  3. 許可の基準(農地の区分ごとの許可要件)
  4. 許可の条件
  5. 違反転用に対する措置

特に重要なのは第1項で、ここに農地転用許可制度の基本原則が示されています。

「農地を農地以外のものにする者は、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可(略)を受けなければならない。」

この条文により、農地の転用には原則として許可が必要であることが明確に規定されています。

第5条(所有権等の移転を伴う農地の転用)

第5条は、農地の権利を取得して転用する場合の規制を定めています。主な内容は第4条とほぼ同様ですが、以下の点が異なります:

  1. 農地の権利を取得する者が許可申請の主体となる
  2. 農地所有者等の同意が必要
  3. 許可不要の例外規定が一部異なる(例:国や地方公共団体が公用・公共用に供するために農地を取得する場合)

第5条の重要性は、農地の権利移動と転用を一体的に規制している点にあります。これにより、転用目的での農地の権利取得を効果的に管理することが可能となっています。

2.1.2 農地法における許可基準

農地法第4条第6項及び第5条第2項に、農地転用の許可基準が規定されています。これらの基準は大きく分けて「立地基準」と「一般基準」の2つがあります。

立地基準

立地基準は、農地の区分(農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地)ごとに設定されています。各区分の概要は以下の通りです:

  1. 農用地区域内農地:原則転用不許可
  2. 甲種農地:原則転用不許可(例外的に許可)
  3. 第1種農地:原則転用不許可(例外的に許可)
  4. 第2種農地:周辺の他の土地に立地困難な場合等に許可
  5. 第3種農地:原則許可

これらの区分は、農地の営農条件や周辺の土地利用状況等によって判断されます。例えば、第3種農地は「市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地」と定義されており、都市的土地利用への転換が比較的容易に認められます。

一般基準

一般基準は、全ての農地区分に共通して適用される基準です。主な内容は以下の通りです:

  1. 農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないこと
  2. 農地の転用面積が転用目的からみて適正であること
  3. 周辺の農地の日照、通風等に支障を及ぼすおそれがないこと
  4. 一時転用の場合、農地への復元が確実であること

これらの基準は、具体的な転用計画を審査する際の重要な判断材料となります。

2.1.3 農地法における違反転用対策

農地法では、違反転用に対する厳格な対策が規定されています。主な内容は以下の通りです:

  1. 措置命令(第51条):違反転用者に対し、その行為の停止や施設の除去等を命じることができる
  2. 原状回復命令(第51条の2):違反転用者に対し、農地への原状回復を命じることができる
  3. 罰則(第51条の3):違反転用を行った者に対し、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金

これらの規定により、違反転用の抑止と是正を図っています。特に、2009年の法改正で罰則が強化されたことで、違反転用に対する抑止力が高まりました。

2.2 農地法施行令・施行規則

農地法の具体的な運用に関しては、農地法施行令(政令)と農地法施行規則(省令)に詳細が規定されています。

2.2.1 農地法施行令

農地法施行令は、農地法の委任に基づいて制定された政令です。主な内容は以下の通りです:

  1. 農地転用許可の権限委任(第1条、第2条)
  • 4ヘクタールを超える農地転用は農林水産大臣、4ヘクタール以下は都道府県知事(一部市町村長)の権限

2. 許可不要転用の範囲(第1条の8)

  • 2アール未満の転用、土地収用法による収用等

3. 農地転用許可申請の手続き(第3条、第4条)

  • 申請書の記載事項、添付書類等

4. 農地の区分の判断基準(第5条~第11条)

  • 甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地の定義と判断基準

特に重要なのは、農地の区分に関する規定です。例えば、第10条では第1種農地の定義として「集団的に存在する農地」「農業公共投資の対象となった農地」などが挙げられており、これらの基準に基づいて個々の農地の区分が判断されます。

2.2.2 農地法施行規則

農地法施行規則は、農地法及び農地法施行令の委任に基づいて制定された省令です。主な内容は以下の通りです:

  1. 農地転用許可申請書の様式(第25条、第26条)
  2. 添付書類の詳細(第27条、第28条)
  • 事業計画書、資金計画書、位置図、平面図等

3. 農地区分の細部判断基準(第43条~第47条)

4. 許可基準の詳細(第47条の3~第47条の7)

  • 立地基準、一般基準の具体的内容

特に、許可基準の詳細規定は実務上非常に重要です。例えば、第47条の3では「周辺の農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないこと」の判断基準として、以下のような具体例が挙げられています:

  • 集団的に存在する農地の中央部に位置する農地を転用するものでないこと
  • 転用行為により隣接農地の通作等に支障が生じないこと
  • 農業用用排水施設の機能に支障を及ぼすおそれがないこと

これらの具体的基準は、許可申請の審査や申請書類の作成において重要な指針となります。

2.3 関連法令(都市計画法、森林法等)との関係

農地転用許可制度は、他の土地利用規制法令と密接に関連しています。主な関連法令とその関係性は以下の通りです:

2.3.1 都市計画法

都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的とした法律です。農地転用との関係で特に重要なのは以下の点です:

  1. 市街化区域と市街化調整区域の区分
  • 市街化区域内の農地:原則として転用が届出制(農地法第4条第1項第7号、第5条第1項第6号)
  • 市街化調整区域内の農地:厳格な許可制

2. 開発許可制度との連携

  • 一定規模以上の農地転用を伴う開発行為には、農地転用許可に加えて開発許可が必要(都市計画法第29条)

3. 地区計画等との整合性

  • 農地転用許可の判断に当たっては、地区計画等の内容との整合性が考慮される

特に、市街化区域内農地の転用届出制は実務上重要です。これは、計画的な市街化を促進するという都市計画法の趣旨を反映したものであり、農地法の例外的取扱いとなっています。

2.3.2 農業振興地域の整備に関する法律(農振法)

農振法は、農業振興地域の指定や農用地区域の設定を通じて、農地の保全と有効利用を図る法律です。農地転用との関係では以下の点が重要です:

  1. 農用地区域内の農地転用
  • 原則として転用が禁止(農地法第4条第6項第1号イ、第5条第2項第1号イ)
  • 農用地区域からの除外手続きが必要(農振法第13条第2項)

2. 農業振興地域整備計画との整合性

  • 農地転用許可の判断に当たっては、当該地域の農業振興地域整備計画との整合性が考慮される

農用地区域からの除外手続きは、実務上非常に重要なプロセスです。除外に当たっては、

①農用地等以外の用途に供することが必要かつ適当であること、②農用地区域以外に代替すべき土地がないこと、③農用地等の集団化、農作業の効率化等に支障を及ぼすおそれがないこと、などの要件を満たす必要があります(農振法第13条第2項)。

2.3.3 森林法

森林法は、森林の保続培養と森林生産力の増進を図ることを目的とした法律です。農地転用との関係では以下の点が重要です:

  1. 林地開発許可制度との関係
  • 農地転用と同時に森林の開発を行う場合、林地開発許可(森林法第10条の2)が必要

2. 保安林指定との関係

  • 保安林に指定されている土地の農地転用は、原則として認められない

森林法による規制は、特に中山間地域での農地転用において考慮が必要となります。

2.3.4 土地改良法

土地改良法は、農業生産基盤の整備や保全を目的とした法律です。農地転用との関係では以下の点が重要です:

  1. 土地改良事業実施中の農地
  • 事業完了後8年を経過していない農地の転用は、原則として許可されない(農地法第4条第6項第1号ロ、第5条第2項第1号ロ)

2. 土地改良施設への影響

  • 農地転用許可の判断に当たっては、土地改良施設への影響が考慮される(農地法第4条第6項第3号、第5条第2項第3号)

土地改良事業との関係は、特に農業振興地域内での農地転用において重要な考慮事項となります。

2.3.5 環境影響評価法

環境影響評価法は、大規模な開発事業等が環境に与える影響を事前に調査・予測・評価し、その結果を公表して環境保全措置を講じることを義務付ける法律です。農地転用との関係では以下の点が重要です:

  1. 大規模な農地転用を伴う事業の場合、環境影響評価が必要となることがある
  2. 環境影響評価の結果は、農地転用許可の判断材料の一つとなる

特に、100ヘクタール以上の農地転用を伴う工業団地の造成などは、環境影響評価法の対象事業となる可能性が高く、農地転用許可申請の前に環境影響評価手続きを完了させる必要があります。

2.3.6 文化財保護法

文化財保護法は、文化財の保存と活用を図ることを目的とした法律です。農地転用との関係では以下の点が重要です:

  1. 周知の埋蔵文化財包蔵地における開発
  • 農地転用に伴う開発行為が埋蔵文化財に影響を与える可能性がある場合、事前の届出や調査が必要(文化財保護法第93条、第94条)

2. 史跡、名勝、天然記念物指定地での開発

  • 指定地内での現状変更は文化庁長官の許可が必要(文化財保護法第125条)

特に、遺跡が多く存在する地域での農地転用では、文化財保護法に基づく手続きが農地転用許可申請と並行して必要となる場合があります。

2.4 通達・ガイドライン

農地転用許可制度の運用に当たっては、法令だけでなく、国からの通達やガイドラインも重要な役割を果たしています。これらは法的拘束力はありませんが、実務上の指針として大きな影響力を持っています。

2.4.1 主要な通達

  1. 「農地法の運用について」(平成21年12月11日付け21経営第4530号・21農振第1598号農林水産省経営局長・農村振興局長通知)

この通知は、農地法の解釈と運用に関する基本的な考え方を示したものです。主な内容は以下の通りです:

  • 農地転用許可制度の趣旨
  • 農地区分の判断基準
  • 許可基準の詳細な解釈
  • 違反転用への対応方針

特に、許可基準の解釈に関する部分は実務上非常に重要です。例えば、「農地の集団化」や「農作業の効率化」といった抽象的な概念について、具体的な判断基準が示されています。

  1. 「農地法関係事務に係る処理基準について」(平成12年6月1日付け12構改B第404号農林水産事務次官依命通知)

この通知は、農地転用許可をはじめとする農地法関係事務の処理基準を定めたものです。主な内容は以下の通りです:

  • 農地転用許可基準の詳細
  • 農地転用許可申請の審査手順
  • 農業委員会の意見聴取の方法
  • 違反転用への対応方法

この通知は、許可権者である都道府県や市町村の担当者向けのものですが、申請者側の行政書士にとっても、許可手続きの流れを理解する上で重要な資料となります。

2.4.2 ガイドライン

  1. 「農地転用許可申請に係る添付書類の簡素化について」(平成30年10月1日付け30農振第1681号農林水産省農村振興局長通知)[1][2]

このガイドラインは、農地転用許可申請の際の添付書類を簡素化し、申請者の負担軽減を図ることを目的としています。主な内容は以下の通りです:

  • 省略可能な添付書類の例示
  • 簡素化された様式の提示
  • 電子データによる提出の推奨
  1. 「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」(平成30年5月15日付け30農振第78号農林水産省農村振興局長通知)

このガイドラインは、いわゆる「ソーラーシェアリング」に関する農地転用許可の取扱いを示したものです。主な内容は以下の通りです:

  • 支柱の基礎部分について一時転用許可で対応可能であること
  • 営農の適切な継続が確実と認められる場合の判断基準
  • 毎年の営農状況の報告義務

このガイドラインにより、再生可能エネルギー施設の設置と農地の保全を両立させる道が開かれました。これらの通達やガイドラインは、農地転用許可制度の運用において重要な役割を果たしています。行政書士として農地転用許可申請業務に携わる際は、これらの内容を十分に理解し、適切に対応することが求められます。また、これらの通達やガイドラインは随時更新される可能性があるため、常に最新の情報を確認することが重要です。

ガイドラインにより、再生可能エネルギー施設の設置と農地の保全を両立させる道が開かれました。

2.5 判例・裁決例

農地転用許可制度の解釈と運用に関しては、裁判所の判例や行政不服審査法に基づく裁決例も重要な法源となります。以下、代表的な事例を紹介します。

2.5.1 判例

  1. 最高裁判所平成17年12月15日判決(民集59巻10号2645頁)

この判決は、農地転用不許可処分の取消訴訟において、裁判所の審理判断の範囲を示した重要な判例です。要旨は以下の通りです:

  • 農地法第4条第2項(現行法第6項)の許可基準は、農地転用許可権者の専門技術的な判断を要する事項を含んでいる
  • 裁判所は、農地転用許可権者の判断に不合理な点があるか否かを判断すべきであり、裁判所が自ら許可基準への適合性を判断すべきではない

この判決により、農地転用許可に関する行政庁の裁量権の範囲が明確化されました。

  1. 東京高等裁判所平成18年11月30日判決(判例タイムズ1242号141頁)

この判決は、違反転用に対する原状回復命令の適法性が争われた事例です。要旨は以下の通りです:

  • 違反転用から相当期間が経過し、周辺の土地利用状況が変化している場合でも、原状回復命令を発出することは可能
  • ただし、違反転用者の帰責性の程度や原状回復の困難性等を考慮し、命令の内容を緩和することが求められる場合がある

この判決は、違反転用への対応において、行政庁に一定の裁量権があることを示しています。

2.5.2 裁決例

  1. 平成25年11月22日付け農林水産大臣裁決(25農振第1838号)

この裁決は、第1種農地の転用不許可処分に対する審査請求事案です。要旨は以下の通りです:

  • 申請地が第1種農地に該当するとの判断に誤りはない
  • 申請に係る施設が第1種農地の例外許可事由である「地域の農業の振興に資する施設」に該当するとは認められない
  • したがって、不許可処分は適法かつ妥当

この裁決例は、第1種農地の転用許可基準の厳格な適用を示しており、実務上の指針となっています。

  1. 平成30年3月30日付け農林水産大臣裁決(29農振第2515号)

この裁決は、農地転用許可申請に対する不作為の違法確認請求事案です。要旨は以下の通りです:

  • 申請から1年以上経過しても許可・不許可の処分がなされていないことは、行政手続法第7条の「遅滞なく」との要件を満たさない
  • ただし、申請者側にも資料の提出遅延等の原因があったため、直ちに違法とまでは言えない

この裁決例は、農地転用許可申請の処理期間に関する行政の責務と申請者側の協力義務のバランスを示しています。

2.6 農地転用許可制度の法体系における位置づけ

以上、農地転用に関する法体系について詳細に見てきました。これらを踏まえ、農地転用許可制度の法体系における位置づけを整理すると以下のようになります:

  1. 基本法:農地法
  • 農地転用許可制度の基本的枠組みを規定
  1. 委任命令:農地法施行令、農地法施行規則
  • 許可基準の詳細や手続きの具体的内容を規定
  1. 関連法令
  • 都市計画法、農振法、森林法等
  • 農地転用と密接に関連する他の土地利用規制を規定
  1. 通達・ガイドライン
  • 法令の解釈指針や運用方針を提示
  1. 判例・裁決例
  • 法令の具体的適用に関する指針を提供

これらの法体系全体が有機的に結びつき、農地転用許可制度を支えています。行政書士として農地転用許可申請業務に携わる際は、この法体系全体を理解し、適切に対応することが求められます。

特に重要なのは、農地法とその委任命令の正確な理解、関連法令との整合性の確認、そして最新の通達やガイドラインの内容の把握です。また、判例や裁決例の動向にも注意を払い、許可基準の解釈や運用の変化を適切に捉える必要があります。

さらに、農地転用許可制度は社会経済情勢の変化に応じて常に進化しています。例えば、近年では再生可能エネルギー施設の設置に関する取扱いの明確化や、申請手続きの電子化の推進など、新たな課題に対応するための制度改正が行われています。このような変化にも常に注意を払い、最新の法体系を理解しておくことが、専門家としての責務といえるでしょう。

申し訳ありません。まだ第2章の内容が完全ではありませんでした。以下に続きを記載いたします。

2.7 農地転用許可制度の国際比較

農地転用許可制度は日本特有のものではなく、多くの国で同様の制度が存在します。ここでは、主要国の農地転用規制を概観し、日本の制度との比較を行います。

2.7.1 アメリカの農地転用規制

アメリカでは、連邦レベルでの統一的な農地転用規制は存在せず、州や地方自治体レベルで規制が行われています。

  1. ゾーニング制度
  • 多くの州や地方自治体では、土地利用計画(ゾーニング)によって農地の保全を図っています。
  • 農業ゾーンに指定された地域では、農地以外の用途への転用が制限されます。
  1. 農地保全地役権(Agricultural Conservation Easement)
  • 農地所有者が自発的に農地の開発権を放棄し、永続的に農地として保全することを約束する制度です。
  • 税制優遇措置などのインセンティブが設けられています。
  1. 農地保護政策法(Farmland Protection Policy Act)
  • 連邦政府の事業が不必要に農地を転用しないよう求める法律です。
  • 直接的な規制ではなく、農地への影響を最小限に抑えるよう求めるものです。

日本の制度と比較すると、アメリカの制度は強制力が弱く、インセンティブベースの政策が中心となっています。

2.7.2 イギリスの農地転用規制

イギリスでは、都市農村計画法(Town and Country Planning Act)に基づく計画許可(Planning Permission)制度によって、農地転用が規制されています。

  1. 計画許可制度
  • 農地を含むあらゆる土地の用途変更には、地方計画当局の許可が必要です。
  • 国の計画政策指針(National Planning Policy Framework)に基づいて判断されます。
  1. 農地の等級分類
  • 農地を5段階(Grade 1~5)に分類し、高品質な農地(Grade 1~3a)の転用を厳しく制限しています。
  1. グリーンベルト政策
  • 都市周辺に「緑地帯」を設定し、その中での開発を厳しく制限しています。
  • 多くの農地がグリーンベルト内に位置しており、結果的に農地保全に寄与しています。

イギリスの制度は、日本の制度と比較すると、より広範な土地利用計画の一部として農地転用を規制している点が特徴的です。

2.7.3 ドイツの農地転用規制

ドイツでは、連邦建設法(Baugesetzbuch)と州の農地取引法(Grundstückverkehrsgesetz)によって農地転用が規制されています。

  1. 土地利用計画(Flächennutzungsplan)
  • 市町村レベルで策定される土地利用計画によって、農地を含む土地利用が規定されます。
  • 計画で定められた用途以外への変更には許可が必要です。
  1. 農地取引規制
  • 農地の売買や賃貸には許可が必要で、農業目的以外での取得は制限されています。
  • これにより、間接的に農地転用が抑制されています。
  1. 自然保護法による規制
  • 生態系や景観の保護の観点から、農地を含む自然地の改変が規制されています。

ドイツの制度は、日本と同様に許可制を採用していますが、農地取引規制を通じた間接的な転用抑制策も併用している点が特徴的です。

2.7.4 国際比較からの示唆

これらの国際比較から、日本の農地転用許可制度について以下のような示唆が得られます:

  1. 計画的土地利用との連携
  • イギリスやドイツの例のように、より広範な土地利用計画の中で農地転用を位置づけることで、計画的な土地利用を促進できる可能性があります。
  1. インセンティブ制度の導入
  • アメリカの農地保全地役権のような、自発的な農地保全を促すインセンティブ制度の導入を検討する余地があります。
  1. 農地の質に応じた規制
  • イギリスの農地等級分類のように、農地の質に応じてより詳細な規制を設けることで、効果的な優良農地の保全が可能になる可能性があります。
  1. 農地取引規制との連携
  • ドイツの例のように、農地取引規制と連携することで、より効果的な農地保全が可能になる可能性があります。

これらの示唆を踏まえ、日本の農地転用許可制度をより効果的かつ柔軟なものに発展させていくことが今後の課題といえるでしょう。

2.8 農地転用許可制度の今後の展望

最後に、農地転用許可制度の今後の展望について考察します。

  1. デジタル化の推進
  • 申請手続きの電子化や、GISを活用した農地情報の管理など、デジタル技術の活用がさらに進むと予想されます。
  • これにより、申請者の利便性向上や審査の効率化が期待されます。
  1. 地方分権の進展
  • 現在、一部の農地転用許可権限が都道府県から市町村に移譲されていますが、この傾向がさらに進む可能性があります。
  • 地域の実情に即した柔軟な運用が可能になる一方で、全国的な制度の統一性をどう確保するかが課題となるでしょう。
  1. 環境・景観保全との連携
  • 農地の多面的機能への注目が高まる中、環境保全や景観保全の観点からの農地転用規制の強化が考えられます。
  • 例えば、生物多様性の保全に寄与する農地の転用を制限するなどの措置が検討される可能性があります。
  1. 再生可能エネルギー政策との調和
  • 太陽光発電施設など、再生可能エネルギー施設の設置需要が高まる中、農地の有効活用と食料生産の確保のバランスをどう取るかが課題となっています。
  • 「ソーラーシェアリング」のような新たな取り組みに対する制度的対応がさらに進むと予想されます。
  1. 人口減少社会への対応
  • 人口減少に伴い、耕作放棄地の増加が懸念される中、農地転用規制の在り方も再検討が必要になる可能性があります。
  • 例えば、条件不利地域での規制緩和や、都市農地の保全強化など、メリハリのある制度設計が求められるかもしれません。
  1. 国際的な食料需給動向への対応
  • 世界的な人口増加や気候変動の影響により、将来的な食料不足が懸念される中、優良農地の確保がより重要になる可能性があります。
  • これに伴い、農地転用規制がさらに厳格化される可能性も考えられます。

これらの展望を踏まえ、農地転用許可制度は今後も社会経済情勢の変化に応じて進化を続けていくことが予想されます。行政書士としては、これらの動向を常に注視し、制度の変化に適切に対応していく必要があるでしょう。

結論

本章では、農地転用に関する法体系について詳細に解説しました。農地法を中心とする法令、関連する他の法律、通達やガイドライン、そして判例や裁決例など、農地転用許可制度を支える多様な法源について理解を深めました。

また、国際比較を通じて日本の制度の特徴や課題を明らかにし、今後の展望についても考察しました。

農地転用許可制度は、食料の安定供給と国土の有効利用という、時に相反する要請のバランスを取る重要な役割を担っています。この制度を適切に運用し、依頼者に的確なアドバイスを提供するためには、本章で解説した法体系全体を理解し、常に最新の動向をフォローしていくことが不可欠です。

行政書士として農地転用許可申請業務に携わる際は、この複雑な法体系を踏まえつつ、個々の案件の特性に応じた適切な対応が求められます。本章の内容が、そのための基礎的な知識と視点を提供する一助となれば幸いです。

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小川洋史lOGAWA Hirofumi
代表取締役
北海道岩見沢市生まれ。
資格:宅地建物取引士、行政書士試験合格(未登録)、賃貸不動産経営管理士、競売不動産取扱主任者、日商簿記1級 FP2,TOEIC895等。
対応言語:日本語(JP), 英語(EN), 伊語(IT)
学歴:札幌西高、東北大、東工大
学位:工学修士、技術経営修士
札幌、仙台、東京、ミラノ(伊)、ボローニア(伊)、ハワイ、バンコク、沖縄など世界各地で田舎の木造からタワマンまで世界中の不動産を経験。主に不動産と法律について発信。
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