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ドローンの法律学シリーズ第7回:【承認と許可の違い】 飛行形態(承認)と空域(許可)を混同しないための法的整理

2026 2/26
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ドローン
2026年2月26日
ドローンの飛行許可申請における許可と承認の違いを、法的に解釈する。
目次

1. 【課題提示】「許可書を持っています」という勘違いが招く、一発アウトの無自覚な犯罪

「国土交通省からDID(人口集中地区)での飛行許可をもらっています。だから、この現場での飛行は完全に合法です」

夜張りの建設現場や、夕暮れ時のイベント会場の片隅で、警察官にこう豪語してDIPS(ドローン情報基盤システム)で出力した紙を突きつけるドローン操縦者がいる。もしあなたがそのような現場の責任者だとしたら、今すぐその操縦者からプロポ(送信機)を取り上げ、電源を切るべきである。

なぜなら、その「DIDの許可書」は、夜間飛行や目視外飛行といった「特殊な飛ばし方」を合法化する免罪符には一切ならないからだ。

日本のドローン実務において、最も初歩的でありながら最も致命的な勘違いが「許可と承認の混同」である。多くの実務家は、DIPS上で申請を通過したという事実だけで「自分は無敵のライセンスを手に入れた」と錯覚する。しかし、現場に駆けつけた警察官や航空局の監査官が確認するのは、「あなたが何のハンコをもらったのか」という冷徹な法的区分である。

例えば、DID上空を飛ぶための「許可」だけを得ていた者が、日没後にドローンを飛ばしたとする。この瞬間、航空法第132条の86が定める「日出から日没までの間において飛行させること」という義務に違反した「無承認飛行」が成立する。

「許可書は持っていたのに、なぜ違法になるのか」という言い訳は法学上、一切通用しない。行政から見れば、それは「運転免許証(車の許可)を持っているからといって、信号無視(ルールの違反)をしていいわけではない」のと同じことだ。

この概念の混同は、単なる申請ミスではない。最大50万円の罰金という前科(刑事罰)を背負い、事業停止処分を受け、クライアントを巻き込んだコンプライアンス違反の記者会見を開く羽目になる、一撃必殺の地雷なのである。

2. 【解決の武器】 航空法第132条の85(許可)と第132条の86(承認)の法理的切断

この無自覚な犯罪の罠から逃れ、あらゆる状況下で完璧な合法性を担保するための武器。それは、航空法が明確に切り分けている「許可(Permission)」と「承認(Approval)」という二つの行政処分の法的性質を、外科医のメスのように鋭く解剖し、使い分けることである。

航空法のドローンの「特定飛行」に関する条文は、明確に二つの柱に分かれている。

1. 飛行の禁止空域(法第132条の85):【許可】の世界 ここは「どこを飛ぶか(Where)」という空間の規制である。 空港等の周辺、高度150m以上の空域、緊急用務空域、そしてDID(人口集中地区)の上空。これら「飛ぶこと自体が危険な場所」に対して、国土交通大臣が特例としてその禁止を解除する行政処分が「許可」である。


2. 遵守すべき飛行の方法(法第132条の86):【承認】の世界 ここは「どう飛ぶか(How)」という行動の規制である。 夜間飛行、目視外飛行、人や物件から30m未満の飛行、催し場所上空の飛行、危険物輸送、物件投下。これら「デフォルトの安全ルール(日中・目視内など)から逸脱した危険な飛ばし方」に対して、国土交通大臣が同等以上の安全性が担保されていると認める行政処分が「承認」である。

自分のビジネスモデルが「どこを飛ぶから【許可】が必要なのか」、そして「どう飛ぶから【承認】が必要なのか」を完全に分離して思考することが必要である。

DID上空(許可)で、かつ夜間(承認)に、建物の壁面から30m未満(承認)に接近して点検を行う場合、あなたは「1つの許可」と「2つの承認」、計3つの独立した法的バリアを突破しなければならない。この「空域」と「形態」の法理的切断を理解して初めて、DIPS2.0のチェックボックスの真の意味を理解し、審査官に一切の反論を許さない緻密な申請ロジックを組み上げることができるのだ。

それでは、ドローンの法律学シリーズ第7回の後半(Part 2)を展開しよう。

「許可」と「承認」という二つの行政処分が、航空法の条文と審査要領の中でどのように交差しているのか。そして、それを実務の最前線である「DIPS2.0」の入力画面でどう使いこなすべきか。その冷徹な法的構造と戦術を徹底的に解剖する。

3. 【メカニズムの解説】 「許可」と「承認」が交差するマトリックス構造と審査の罠

航空法が「許可」と「承認」をわざわざ別の条文(第132条の85と第132条の86)に分けて規定しているのには、極めて論理的な理由がある。この法理的構造(メカニズム)を理解しないまま申請書を作成することは、目隠しをして地雷原を歩くようなものだ。

3-1. 空間のバリアを解除する「許可(法第132条の85)」

法第132条の85が規定する「飛行の禁止空域」は、国土という絶対的な「空間」に対する規制である。

 ・第1号:空港等の周辺、高度150m以上、緊急用務空域(航空機との衝突リスク)

 ・第2号:人口集中地区(DID)の上空(地上の第三者への墜落リスク)

これらの空域は、そこに無人航空機が存在すること自体が「悪(違法)」とされる絶対的なバリアだ。このバリアを無効化し、「そこに存在してもよい」という特権を得るための行政処分が「許可(Permission)」である。空間に対する許可であるため、緯度・経度や海抜高度といった「三次元の座標データ」による客観的証明が極めて重要となる。

3-2. 行動の縛りを解除する「承認(法第132条の86)」

一方、法第132条の86が規定する「飛行の方法」は、操縦者の「行動(アクション)」に対する規制である。 同条第1項には10個のルールが並んでいるが、第1号〜第4号(飲酒操縦の禁止、飛行前確認、衝突予防、迷惑行為の禁止)は、いかなる場合も例外が認められない「絶対遵守義務」である。

我々がターゲットとすべきは、同条第1項第5号〜第10号(夜間飛行、目視外飛行、30m未満、催し場所上空、危険物輸送、物件投下)である。これらは本来やってはならない「危険な行動」だが、同条第2項第2号の規定により、国土交通大臣から「同等以上の安全性が担保されている」と「承認(Approval)」を受けた場合に限り、例外的にその縛りが解除される。これは空間ではなく「行動の質(マニュアルやシステムによる代替的対策)」を評価する処分である。

3-3. マトリックス構造による「審査基準の掛け算」の罠

実務において最も恐ろしいのは、この「許可(空間)」と「承認(行動)」が複合的に交差した時である。 国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」第5章(飛行形態に応じた追加基準)を精読せよ。

あなたが「DID上空(許可)」で「目視外飛行(承認)」を行う場合、審査官は審査要領「5-2(人又は家屋の密集している地域の上空における飛行)」の基準と、「5-4(目視外飛行)」の基準を両方同時に(掛け算として)適用してくる。

さらに、「夜間(承認)」に「目視外(承認)」を行う場合、視覚的な安全マージンが完全に喪失するため、審査のハードルは乗数的に跳ね上がる。凡庸な実務家は「DIPSでチェックを複数入れるだけで済む」と錯覚しているが、法的には「チェックを一つ増やすごとに、審査要領の厳しい追加基準を自ら背負い込んでいる」という冷徹な事実を自覚しなければならない。

4. 【実務への落とし込み】 DIPS2.0のチェックボックスを法的に「支配」する

この「許可」と「承認」の厳密な法理的切断を理解したならば、ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)での申請業務は、単なる「入力作業」から「高度な法務戦術」へと昇華される。

4-1. 「包括申請の罠(とりあえず全部チェック)」からの脱却

DIPS2.0の「飛行概要」入力画面には、「飛行許可が必要な理由(飛行空域)」と「飛行承認が必要な理由(飛行方法)」のチェックボックスが並んでいる。 法務リテラシーの低い事業者は、「後から必要になるかもしれないから」という安易な理由で、自らの業務に直結しない「夜間飛行」や「危険物輸送」といった承認項目にまで漫然とチェックを入れる(いわゆる「フル包括」の申請)。

これは、法学的に見れば「私は、本来不要な極めて厳しい追加安全基準(立証責任)を、自発的に全て背負い込みます」という行政に対する自殺行為である。

例えば「物件投下」の承認チェックを入れた瞬間、審査要領5-8に基づく厳格な立入管理区画の設定や機体の機能証明の義務が発生する。あなたのビジネスが単なるDIDでの空撮(許可)であるならば、承認項目のチェックは最小限に削ぎ落とさなければならない。「不要な法的バリアを自ら構築しないこと」が、最速で許可・承認を勝ち取るための絶対原則である。

4-2. 独自マニュアルにおける「許可」と「承認」の立証の分離

高難易度申請において審査官を論破するための独自マニュアル(または安全確保措置の説明)を作成する際、この「許可(空間)」と「承認(行動)」を明確に切り分けて記述する。

【独自マニュアルでの立証ロジック構築例】

  • 【空域の許可(DID上空)に関する立証】: 「本飛行は航空法第132条の85第1項第2号に基づく飛行禁止空域(DID)の飛行である。この空間的リスクを相殺するため、機体にはプロペラガードを装着し(M2対策)、かつ国土地理院地図に基づく飛行範囲の特定とジオフェンスによる空間逸脱のシステム的遮断(M1対策)を実施する。」
  • 【飛行方法の承認(目視外飛行)に関する立証】: 「同時に、本飛行は航空法第132条の86第1項第6号の飛行の方法によらない目視外飛行である。この行動的リスク(操縦者の視認性喪失)を相殺するため、機体にFPVカメラを搭載して前方視界を確保し、通信途絶時には〇秒以内に自動帰還(RTH)が作動するフェールセーフ機能(M3対策)が確実に関与することを、事前の通信テストログによって証明する。」

このように、「私が今説明しているのは、空域(許可)の安全対策なのか、それとも行動(承認)の安全対策なのか」を明確に分離し、それぞれに対応する審査要領の要求事項(機能・性能、体制)に対して、物理的・定量的なエビデンス(M1〜M3の対策等)をぶつけるのだ。

審査官は、DIPS2.0のチェックボックスと、このマニュアルの立証ロジックが「1対1」で完璧にリンクしていることを見た瞬間、あなたの申請内容の解像度の高さに圧倒される。彼らは「この申請者は、自分がどの法律を解除しようとしているのかを完全に掌握している」と認識し、不当な裁量権(補正指示)を行使することを諦めるのである。

許可と承認の違いを理解することは、単に用語を覚えることではない。それは、複雑に絡み合ったドローン規制の結び目を解きほぐし、最速かつ合法的に空のビジネスを展開するための「外科医のメス」を手に入れることなのだ。

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