2026年法改正一覧|中小受託取引適正化法・不動産登記義務化の企業対策
2026年は、企業経営や不動産業界に大きなインパクトを与える法改正が目白押しの年です。すでに1月に施行された「中小受託取引適正化法(旧下請法)」をはじめ、民事訴訟のデジタル化、社会保険制度改正、カスタマーハラスメント防止義務化など、法務担当者はもちろん、不動産オーナーや個人事業主にとっても見逃せない変更が相次いでいます。
本記事では、2026年に施行される主な法改正を一覧で整理しつつ、不動産業界・行政手続き・中小企業経営への影響を専門的な視点から深掘りしていきます。「自分の会社やビジネスにどう関係するのか」が明確になるよう、実務で押さえるべきポイントをまとめました。
2026年の主な法改正スケジュール一覧
まずは、2026年中に施行される(または施行済みの)主な法改正をタイムライン形式で整理しましょう。
- 2026年1月1日:下請法が「中小受託取引適正化法(取適法)」へ名称・内容変更
- 2026年1月1日:労働安全衛生法改正(フォークリフト等の特定自主検査厳格化、石綿事前調査義務化)
- 2026年4月1日:相続登記の義務化に伴う過料適用の本格運用(2024年4月施行・経過措置期限に注意)
- 2026年5月まで:民事訴訟のデジタル化(オンライン提出等の全面施行)
- 2026年5月頃:民法改正(離婚後の共同親権などの導入)
- 2026年6月:診療報酬・介護報酬の3年ごとの見直し
- 2026年10月:社会保険制度改正(106万円の壁撤廃)
- 2026年10月:年金制度改正法施行
- 2026年内:労働施策総合推進法改正(カスタマーハラスメント防止措置の義務化)
これだけの法改正が集中する年は近年でも珍しく、特に中小企業の経営者や法務担当者には「知らなかった」では済まされない変更が多数含まれています。以下、特に重要な改正について詳しく解説します。
中小受託取引適正化法(旧下請法)の全貌と不動産業界への影響
下請法から「取適法」へ──何が変わったのか
2026年1月1日、長年「下請法」として親しまれてきた法律が「中小受託取引適正化法(取適法)」へと名称変更されるとともに、内容面でも大幅な改正が行われました。
従来の下請法は、親事業者と下請事業者の取引を規制するものでしたが、取適法では「受託取引」全般に適用範囲が拡大されています。具体的には以下のようなポイントが注目されます。
- 取引対象の拡大:従来の製造委託・修理委託に加え、より幅広い役務提供契約が対象に
- 支払遅延に対する罰則強化:違反企業名の公表基準が厳格化
- 受領拒否・返品・買いたたき等の禁止行為の明確化
- 公正取引委員会による是正措置の迅速化
不動産業界における影響──建設・リフォーム・管理業務
不動産業界では、建設工事やリフォーム工事の下請構造が多層的であることから、取適法の影響は決して小さくありません。
特に注意が必要なのは、不動産管理会社がリフォーム・修繕工事を外注する場合です。管理会社が発注者として「親事業者」に該当する場合、取適法に基づく書面交付義務や支払期日の遵守(受領後60日以内)が厳格に適用されます。
また、不動産デベロッパーが地場の中小建設会社に建築工事を発注するケースでも、これまで以上に契約書面の整備と支払条件の明確化が求められます。「口約束で工事を始めてもらう」「検収を遅らせて支払いを先延ばしする」といった慣行は、取適法違反として公正取引委員会の調査対象になり得ます。
行政書士・法務担当者が今すぐやるべきこと
- 既存の外注契約書を取適法に準拠しているか点検する
- 支払サイト(支払期限)が60日を超えていないか確認する
- 社内の発注フローに書面交付のチェックポイントを組み込む
- 取引先リストを整理し、取適法の対象となる取引を洗い出す
相続登記義務化の「本番」が到来──不動産オーナーが直面するリスク
2024年施行から2年──経過措置の期限に要注意
2024年4月1日に施行された相続登記の義務化ですが、2026年はこの制度が実質的に「本番」を迎える年です。施行前に発生した相続についても、「施行日から3年以内」つまり2027年3月末までに登記を完了する必要があります。
つまり、2026年は「あと1年しかない」というタイムリミットが意識され始める時期であり、行政書士事務所や司法書士事務所への相談が急増することが予想されます。
未登記のまま放置するとどうなるのか
正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。さらに、未登記の不動産には以下のような実務上のリスクがあります。
- 売却・担保設定ができない:登記名義が被相続人のままでは、金融機関が融資を実行しない
- 空き家問題の深刻化:所有者不明のまま建物が老朽化し、特定空家に認定されるリスク
- 固定資産税の負担トラブル:相続人間で税負担の押し付け合いが発生
- 再開発・まちづくりの障害:所有者不明土地が地域の開発計画を停滞させる
国土交通省の推計によれば、所有者不明土地は全国で約410万ヘクタール(九州本島の面積を超える規模)に上ります。相続登記の義務化は、この「所有者不明土地問題」を解消するための国策でもあるのです。
相続人申告登記という「応急措置」も活用を
遺産分割がまとまらない場合でも、「相続人申告登記」を行うことで過料を回避できます。これは正式な相続登記ではなく、「自分が相続人である」ことを法務局に申し出る簡易な手続きです。行政書士が相続関係の書類作成をサポートできるケースも多いため、まずは専門家に相談することをお勧めします。
労働安全衛生法改正──石綿(アスベスト)規制強化と不動産取引
解体・改修工事の事前調査義務化がもたらす影響
2026年1月施行の労働安全衛生法改正では、建築物の解体・改修工事における石綿(アスベスト)の事前調査が有資格者による実施に限定されました。さらに、工事の発注者にも調査結果を確認し、安全対策を講じる責務が課されています。
この改正は、不動産取引の現場にも直接的な影響を与えます。
- 中古物件の売買時:築年数の古い物件ではアスベスト含有の可能性が高く、重要事項説明での告知義務がより重要に
- リノベーション投資:改修前の石綿調査費用が投資コストに上乗せされる
- テナント退去時の原状回復:原状回復工事にもアスベスト事前調査が必要になるケースが発生
- 建物解体を伴う土地売却:解体費用の見積もりにアスベスト調査・除去費用を織り込む必要がある
不動産投資家にとっては、物件取得時のデューデリジェンス(買主調査)において、アスベスト関連の確認項目が一つ増えたと捉えるべきでしょう。特に1970〜1990年代に建築された建物は要注意です。
社会保険制度改正(106万円の壁撤廃)と不動産経営
パート・アルバイトの社会保険加入要件の変更
2026年10月から、いわゆる「106万円の壁」が撤廃されます。これにより、これまで社会保険の適用対象外だった短時間労働者の多くが新たに加入対象となります。
不動産業界への影響は以下の通りです。
- 不動産管理会社:パートタイムの清掃スタッフや事務スタッフの社会保険料負担が増加
- 賃貸経営者:管理委託費の値上げにつながる可能性がある
- 建設業:短時間勤務の現場作業員のコスト構造が変化
特に中小の不動産管理会社にとっては、人件費の増加が経営を圧迫する要因になりかねません。取適法の施行と合わせて、外注と内製のバランスを見直す良い機会とも言えるでしょう。
民事訴訟のデジタル化──不動産紛争の迅速化に期待
2026年5月までに全面施行される民事訴訟のデジタル化により、訴訟書類のオンライン提出や、ウェブ会議による口頭弁論が本格化します。
不動産関連の紛争──たとえば賃料滞納に基づく明渡訴訟、境界確認訴訟、建築瑕疵に関する損害賠償請求などにおいて、手続きの迅速化が期待されます。
これまで裁判所への出頭が必要だった手続きがオンラインで完結する場面が増えるため、遠方の物件に関する訴訟でも、弁護士や当事者の負担が軽減されます。不動産投資家が全国に物件を持つ時代において、この改正は実務上非常に大きなメリットです。
カスタマーハラスメント防止義務化と不動産業界
接客業務の多い不動産業界は特に注意
労働施策総合推進法の改正により、企業にカスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置が義務化されます。不動産業界は顧客との接点が多く、以下のような場面でカスハラが問題になりやすい業種です。
- 賃貸仲介での内見時に過度な要求や暴言を受ける
- 管理会社への深夜の執拗なクレーム電話
- 売買契約後の理不尽な値引き交渉や脅迫的言動
- 退去時の原状回復費用を巡るトラブルでの威圧行為
企業としては、カスハラ対応マニュアルの策定、相談窓口の設置、従業員への研修実施などが求められます。特に個人経営の不動産会社では、これまで「お客様は神様」の精神で対応してきたケースも多いかもしれませんが、法的に従業員を守る体制づくりが不可欠です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 中小受託取引適正化法(取適法)は不動産会社にも適用されますか?
はい、不動産会社が外注先に対して修繕工事やシステム開発、広告制作などを発注する場合、資本金要件を満たせば親事業者として取適法の規制対象になります。特に建設・リフォーム関連の外注は注意が必要です。
Q2. 相続登記の義務化に違反した場合、すぐに過料が科されますか?
法務局からいきなり過料が科されるわけではなく、まず登記を促す通知が届きます。それでも「正当な理由」なく放置した場合に、裁判所が10万円以下の過料を決定します。ただし、2027年3月末の経過措置期限を過ぎると本格的な運用が始まると見られています。
Q3. アスベストの事前調査は誰が費用を負担するのですか?
原則として、工事の発注者が費用を負担します。解体工事を伴う土地売買では、売主が解体費用としてアスベスト調査費を織り込むか、買主が取得後に負担するかは契約条件次第です。重要事項説明でアスベストの有無を告知することが宅建業法上も求められています。
Q4. 106万円の壁撤廃で、不動産オーナーの経営にはどのような影響がありますか?
直接的には、管理委託先の管理会社や清掃会社が社会保険料負担増に伴い委託費を値上げする可能性があります。間接的には、パート従業員が「働き控え」をしなくなることで労働力確保が容易になるというプラスの側面もあります。
Q5. 民事訴訟のデジタル化は、個人でも利用できますか?
はい、個人でも利用可能です。ただし、弁護士や司法書士が代理人となっている場合はオンライン提出が義務化される一方、本人訴訟の場合は当面の間、紙での提出も認められる見込みです。不動産紛争でも活用できるため、弁護士への依頼がよりスムーズになるでしょう。
Q6. カスハラ防止措置を講じていないと、企業にはどのようなペナルティがありますか?
現時点では直接的な罰則は設けられていませんが、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となります。また、従業員がカスハラにより精神的被害を受けた場合、企業が安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるリスクがあります。
2026年の法改正に備えるために──まとめと今後のアクション
2026年は、企業経営と不動産業界の双方にとって「制度変革の年」と言っても過言ではありません。特に押さえるべきポイントを整理すると以下の通りです。
- 取適法への対応:外注契約書の見直し、支払サイトの確認、書面交付フローの整備
- 相続登記の義務化:未登記物件の洗い出し、相続人申告登記の活用、遺産分割協議の促進
- 石綿規制の強化:中古物件取得時のデューデリジェンスにアスベスト調査を組み込む
- 社会保険制度改正:人件費シミュレーションの実施、管理委託費の見直し交渉
- カスハラ防止:対応マニュアルの作成、従業員研修の実施、相談窓口の設置
- 民事訴訟デジタル化:顧問弁護士との連携強化、オンライン手続きへの対応準備
これらの法改正は、一つひとつが独立しているように見えて、実は「中小企業の取引適正化」「不動産の権利関係の明確化」「労働者の安全・権利保護」という大きな政策トレンドの中で連動しています。個別の対応だけでなく、全体像を把握した上で優先順位をつけて取り組むことが重要です。
法改正への対応は、「知っている」と「実行できている」の間に大きな差があります。特に不動産取引や行政手続きに関わる部分は、専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えながら確実に対応できます。
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