【解説】 港則法とは、港内における「船舶交通の安全」と「港内の整頓」を図ることを目的として制定された法律である。 海上の交通ルールを定める法律には他に「海上衝突予防法」や「海上交通安全法」が存在するが、港則法は政令で指定された特定の「港とその区域」という限定された水域においてのみ適用される、いわば「港の特別ルール」である。
【実務上のポイント(ドローン運用への適用)】 ドローンは航空機であり船舶ではないため、港則法が定める船舶向けの航行ルールそのものが直接適用されるわけではない。しかし、港湾エリアでドローンビジネスを展開する際、この法律の特定の条文が、航空法とは全く別の「強力な法的バリア」として立ち塞がる。
1. 「工事又は作業」の許可(第31条) 港則法第31条第1項は、「特定港(喫水の深い船舶や外国船舶が常時出入する港)内又は特定港の境界付近で工事又は作業をしようとする者は、港長の許可を受けなければならない」と定めている。 ドローンを用いた港湾施設の点検、測量、あるいは業務としての空撮は、この「工事又は作業」に該当する可能性が極めて高い。つまり、DIPS2.0で航空法の許可・承認を取っていても、それとは完全に独立して、その港を管轄する港長(海上保安部長等)から港則法に基づく許可をもぎ取らなければならないのだ。
2. 「行事」の許可(第32条) 同じく第32条において、「特定港内において端艇競争その他の行事をしようとする者は、予め港長の許可を受けなければならない」と規定されている。港湾エリアを利用してドローンの実証実験イベントやレース等の催しを行う場合、この規定が適用される。
3. 管轄権力の違い(特定港以外の港への準用) この「工事・作業」や「行事」の許可規定は、特定港以外の港であっても準用される。ただしその場合、許可の権限は港長ではなく、その港の所在地を管轄する「管区海上保安本部の事務所の長(海上保安署長など)」が握ることになる。
【法務戦術】 海や港の周辺でドローンを飛ばす際、「DID(人口集中地区)ではないし、航空法の包括申請もあるから自由に飛べる」と判断するのは、法務リテラシーの欠如である。 真のプロフェッショナルは、自分の飛行エリアが港則法の適用水域であるかを事前に特定し、自らのミッションが「作業」に該当するか否かを所轄の海上保安部等と冷徹に調整する。海を制するためには、空の法律(航空法)だけでなく、海の法律(港則法)の決裁印も同時に手中に収めなければならないのである。


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